佳作 世界を支える海運

大阪教育大学附属平野中学校 2年 岩﨑 信時

 私たちの生活で利用しているもののうち、海外からの輸入品、例えばスーパーマーケットに並ぶ肉や果物、衣服、靴やバッグ、家具や雑貨、電化製品、日々読んでいる本や新聞紙の原料である木材チップ、電気をつくるエネルギーとなる石油、石炭、天然ガスなど、殆どのものが船によって運ばれています。
 海運の長所は、航空機やトラック、鉄道などの、他の輸送手段と比較して重量・距離当たりの輸送コストが格段に安いという点です。
その為、太古の昔から大量・長距離輸送を担ってきましたし、インターネットや携帯電話が広く普及した現在でも、実際の輸送の内、大部分は船が担っています。また、国内輸送においても、ドライバーの高齢化や人手不足などが進んでいるために、貨物車を丸ごと乗せて長距離輸送を行うフェリー等の役割が大きくなってきています。他にも、獲った魚を船で加工し、そのまま輸送するという輸送船も登場しています。これにより、コストや時間を削減することができ、効率的な輸出入が可能になりました。
 海運の短所としては、先ず輸送船の速度が遅く、時間が他の輸送手段よりもかかることです。例えば、八千キロメートル先の目的地へ輸送機と輸送船が向かったとします。輸送機は、およそ時速八百キロメートル程度で進み、輸送船は貨物船の中で最も速いとされているコンテナ船の速さ、時速約四十五キロメートルで進みます。どちらの方が早く目的地に着くでしょうか。計算をしてみましょう。
輸送機は約十時間で到着します。一方で輸送船は約百七十八時間、一週間程度かかります。差は歴然、圧倒的に輸送機が早く到着します。
また、貨物の積み降ろしにも他の移動手段と比べて大きな設備や高い経費、そして時間が必要となります。しかし、最近では機械化や専用船の登場により石油などの液体や、小麦や石炭などの粒体の積み降ろしの簡易化が進んでいます。また、輸送船自体も技術の進歩により進化しています。
 では、古くなったり壊れた貨物船はどうなるのでしょうか。
 「二〇〇九年の船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約」この条約は通称、シップリサイクル条約といいます。
これは五〇〇国際総トン以上の全ての船舶にインベントリの作成、そして維持管理が義務付けられます。インベントリとは、船に存在する有害物質等の量と、場所を記載した一覧表です。また、所管官庁により承認された船舶リサイクル施設でなければ船を解体・リサイクルすることができなくなります。この条約により船は適切な施設で解体、リサイクルされます。
 次に水運に関する事件についてです。主に貨物を目的として、武装集団いわゆる海賊に襲われる事件が起こっています。近年では、自動小銃やロケット弾などを用いるなど、凶悪化しており乗組員が死傷した事例もあります。海賊事件は特に東南アジア海域で多く発生しています。ここにはマラッカ・シンガポール海峡やスンダ海峡など、海上交通にとって重要な場所がたくさんあります。また、日本が中東地域から石油や鉄鉱石などの貨物を輸入する際にも、殆どがここを通って運ばれます。国別では、インドネシアで最も多く海賊事件が発生しています。二〇一九年には、日本の貨物船が攻撃された事件がありました。
 二〇一九年六月一三日に、ホルムズ海峡付近で日本とノルウェーの海運会社が運航するタンカー二隻が襲撃を受けた事件です。リムペットマインといわれる吸着型水雷か飛来物の攻撃を受け、両船で火災が起きました。幸い、乗組員は全員救助され、負傷者も数名でした。
 また、次のような事件も多く起きています。
それは貨物船のコンテナに入り、密入国するというものです。中東などからイギリスへの貨物船のコンテナの中に、子供を含む三五人入っており、イギリスに到着したころには、一人が死亡し複数人が重度の脱水症や低体温症を引き起こしていたといいます。コンテナの中には、外気の温度変化で貨物が結露などを起こす、その影響での錆びつきや、菌が繁殖し腐敗を起こすことを防ぐためエアコンがついているものもあります。しかし、貨物専用のため、快適とは程遠いものです。
 他国との貿易や国内の物流に用いられる海運産業は、物量や価格などのメリット、速度などのデメリットがあったけれど、私たちの生活の中で支えになっていることがわかりました。また、アメリカやヨーロッパ、アジアの国との関わりの中でも、技術の向上などにより、盛んに輸出入がされ、生活の質が高まっていくと思いました。また、海運の重要性が高まると考えました。

2020年12月02日