中学生 海の作文コンクール
海での仕事や海について考えたこと・海での体験 海・船・港・川・湖 など 広く「海」にかかわるもの
大阪・京都・奈良・滋賀・和歌山の中学生対象(2023.4.1現在)
令和6年度 第58回 中学生 海の作文コンクール 受賞作品 (敬称略)
- 金賞 近畿運輸局長賞 僕の仲間
- 吹田市立古江台中学校 2年 市場 大都
- 銀賞 近畿海事広報協会会長賞 碧い海とともに
- 近畿大学附属和歌山中学校 1年 出山 碧海
- 銅賞 近畿海事広報協会会長賞 海の平和と恵み
- 桃山学院中学校 1年 引地 春心
- 佳作 近畿海事広報協会会長賞 下記8作品
- 海の顔 大阪市立文の里中学校2年 西田 朱里
- 海への道しるべ 高槻市立川西中学校1年 松原 結之輔
- 海を渡って入ってくるフィットネスマシン 桃山学院中学校1年 坪野 叶和
- 南海トラフ 大山崎町立大山崎中学校2年 鈴木 美結
- 海にたまっていくゴミ 桃山学院中学校1年 赤田 陽葵
- 近所の海から考えたこと 桃山学院中学校1年 姫田 紗和
- サマーキャンプで感じたこと 桃山学院中学校1年 松本 和子
- 魚釣り 奈良市立富雄第三中学校1年 片山 歩
- 令和6年度 第58回 中学生 海の作文コンクール 受賞作品 選評
- 審査選評
大阪文学学校講師 高田 文月 氏
今回の作品審査するにあたって、昨年までの金賞、銀賞、銅賞、佳作といった固定した枠組みや入賞者数に無理に収めるような(数合わせの)視点をはずして読むことにしました。
総応募数がかつて六00作近くもあった頃に比べるとベースの数はもとより内容においても大きく開きがあります。最近の傾向は作文というよりネット等の資料をもとに数字や解説を調べあげて報告する、レポートの形になっていく傾向が強く、どのように配慮して作品を掬い取ろうとしても、どれも同じ顔にしか見えません。残念ですが、選者の意図と応募される側の姿勢がズレるばかりのように思えます。
虚心に、数ある作品を読んで、素直に作者の顔が見える作品を選ぶようにしました。また他の人と少しは観点が違う人のものを取り上げるように意図して佳作は選びました。順に一席、二席、三席、という形でピックアップして、何らかの賞として残したいのは、その三作のみになりました。残りの何作かはいわゆる佳作として並置されるものと考えます。
まず市場大都さん(吹田市立古江台中学校2年)の「僕の仲間」を第一席に推したいと思います。市場さんは個人応募されているようですね。学校からまとめて応募したのではない方のようです。ご自分独りの意志で応募されたのでしょうか。あるいは先生に勧められてのことでしょうか。いずれにしても「個人応募」は珍しいですが、作文の内容や文章のしっかりと自律した書き方に、その積極的な姿勢は納得できると思いました。文字、表記、形式なども正確で整っています。応募する、という基本ルールをまず押さえています。つまり多くの他の作品が残念ながら、そうしたことが満たされていないのです。
市場大都さんは、スポーツが苦手だそうです。でも一つだけ、水泳は得意、といえるらしい。そこで吹田市の6年生が行っている海での2キロの遠泳の体験を丁寧に書いていきます。おそらく似た経験は他の方にもあると思いますが、市場さんは、同じような体験をしても、自分の感じていることを具体的に自分の言葉をさがして読む人に伝わるように書く力があります。それには経験している一つひとつの小さな実感を見逃さずに受け止めて、それをじっくりと言葉にしていこうと取り組む姿勢があるからです。こうした体験を通して、「海」への共感が特別な自分のものとなる、ということを示し、他のみなさんが書いているような「海の環境問題」へと目を向けて行くのです。遠泳を仲間と泳ぎ切った「竹野浜」の海という個別の海への思いを基にして大きなテーマへ向かっていく展開が立派ですね。
二席に推したい作文は、出山碧海さん(近畿大学付属和歌山中学校1年)の「碧い海とともに」です。名前の碧い海がタイトルに組み込まれて、両親の海への愛が自分の名前に反映していることをまず説明してくれています。家族全員が海に親しみ、釣りを愛好して自身が幼いころから経験してきた様々な釣りのシーンを臨場感をもって描いています。釣りの好きなひとの釣りの作文も他にも書かれていますが、出山さんの釣りの情景はいちいちリアルで現実味があってダイナミックな魅力がありますね。その上で海での困った事を自分のこととして取り上げていくと、問題は身近で現実味の帯びたものに感じます。実感のある主張でなければ、相手には伝わりません。どこかから引用しただけの内容は、同じ趣旨のことが書かれていても読む者には響かないのです。出山碧海さんは、楽しい釣りの話から自分の困りごととして大きなテーマに迫って行きました。自分のことをいかに相手に伝えたいのか、というのは文章を書くうえに大切な気持ちです。
三席に選んだのは、引地春心さん(桃山学院中学校1年)の「海の平和と恵み」でした。引地さんは歌うことが好きで、合唱団に在籍しています。その合唱団で取り組んでいる歌に沖縄の平和に関する歌がある、というのです。指揮者の先生から教えてもらった沖縄に関するいろいろな戦争にまつわるエピソードから引地さんは考えを進めていきます。戦艦が沈んだ海は危険な物質で汚染されなかったのだろうか。現在の海にもある問題にも繋げていき、祖父の家のある海にも考えが巡ります。祖父の好きな安乗の灯台、漁師さんの仕事、歌うことで学んだ沖縄の平和への思いが身近な海の問題へも繋がっています。あちこちに大きくテーマが広がっていきますが、出発点は自分の経験や身近に見聞したことです。問題を自分自身に関わるように引き寄せて考えることは気づく気持がないと出来ません。身の回りに起こる小さなことから大きな世界の問題に気づいていく訓練が必要かもしれません。
(高田文月)
- 事務局からのお願い
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今回も「海の作文」を応募いただき、ありがとうございました。
日本は四面環海の国で海からの恵みを受け、国民生活と産業活動の基盤は海外貿易と海上輸送に依存しています。このため、海を舞台として活躍する海運・造船・港湾・物流・水産・海洋レクリエーションなどの海事産業をはじめ、広く海に関わる自らの体験等を文章表現することによって海への関心をもってもらいたいと思い、「中学生海の作文コンクール」を開催しているところでございます。
大阪文学学校講師 高田文月先生の選評にもございますように、最近の傾向は作文というよりネット等の資料をもとに数字や解説を調べあげて報告する、レポートの形になっていく傾向となっています。事務局といたしましても「第58回中学生海の作文コンクール募集規程」に、応募作品は本人が書いた未発表の作品であり、ネット検索・資料等を引用の際は必ずその旨を明記の上【著作権】に注意し、応募者個人のオリジナル作品となるよう記載しているところでございます。また、審査及び表彰についても、「大阪文学学校の講師が審査し、優秀作品最大40点を選び、」としていることから、今回、金賞1名、銀賞1名、銅賞1名、佳作8名とさせていただきました。
来年度も「中学生海の作文コンクール」の開催予定をしております。ご応募いただくみなさまには、調べることにとどまらず、私たちのくらしと海事産業とのかかわりに関心を持って個性を表現した応募者本人のオリジナル作品として、是非ともご応募くださるようよろしくお願いします。
(公社)近畿海事広報協会 事務局
作品募集 チラシ(PDF)
- テーマ
海や川や湖の環境保全・船・働く人・いきもの・遊びなど、広く海に関する『海』を自由に表現してください。
応募資格
大阪・京都・奈良・滋賀・和歌山の各府県に所在する中学校の生徒(2023年4月1日現在)
原稿の長さ
400字づめ原稿用紙5枚以内
必要記載事項
原稿には、題名(必ず各自でつけてください)、学校名、学年、氏名、ふりがなの記載をお願いします。
応募締切日2023年9月30日(土) 必着
今年度の受付は終了いたしました。
たくさんのご応募、ありがとうございました。
※学校の先生へのお願い
学校でとりまとめてご応募いただく場合は、
学校名、題名、学年、氏名、ふりがな
を記した一覧表(任意形式)をお付けください。
一覧表のみメールでも可能です。
kaiji-kk@mocha.ocn.ne.jp まで
応募先
〒552-0021 大阪市港区築港3丁目7-15 港振興ビル204
公益社団法人 近畿海事広報協会「海の作文コンクール」係
TEL 06-6573-6387
受賞発表
2023年12月初旬予定
受賞者は所属中学校に通知後、当協会ホームページ、Facebookでも発表
受賞作のうち上位10点を機関紙「近畿海事広報協会たより」に掲載します。
応募上のご注意
※個人情報は、中学生海の作文コンクール事業にのみ利用します。
※受賞者の情報や表彰式で撮影した写真等は、当該事業に関係するメディア、印刷物、広報物に使用します。
※応募作品の所有権並びに著作権は主催者側に帰属いたします。
※応募作品の返却は致しておりませんのでご了承下さい。
※応募前に原稿のコピーを取っておく等の対応をお願い致します。
※応募は1人1篇、他のコンクール等に入賞した作品は応募できません。
※ネット検索、資料等を引用の際は必ずその旨を明記の上【著作権】に注意し、応募者個人のオリジナル作品となるようにしてください。
- 主催
- 公益社団法人 近畿海事広報協会
- 後援
- 国土交通省近畿運輸局
大阪府教育委員会
大阪市教育委員会
(株)日本海事新聞社
- 審査員
- 大阪文学学校講師:高田 文月 氏