銅賞 海の中の異常気象・海洋熱波

大阪教育大学附属平野中学校 2年 中陳 裕晴

 日々の暮らしの中で、地球温暖化を肌で感じる事が多くなってきました。その影響は農業、衛生への影響、また大雨や洪水などのリスク増加といったさまざまな形で、自然環境と社会を脅かしています。僕たちが過ごす陸の上でも多くの問題を抱えている今、地球表面の七割を占めている海洋の存在を無視することはできません。温暖化による海への影響を調べてみることにしました。
 海洋は地球温暖化の進行をやわらげる役割を担っています。例えば、一九七一年~二〇一〇年の四十年間に地球全体で蓄積された熱エネルギーの九割以上は海洋に吸収されています。また、人間活動によって放出された二酸化炭素の約三割を海洋が吸出して、大気中の二酸化炭素の濃度の上昇も抑えてくれているのです。
 一方、熱を吸収した海洋はどうなっていくのでしょうか?海水温の上昇を引き起こし、 自身も温暖化していきます。海洋は大気に比べて変化しにくいですが、いったん変化をしてしまうとその状態が長く続きます。このため、温暖化により海水温の分布や海流が変われば長期にわたって気候に影響を及ぼすことが懸念されています。
 温暖化と海洋の繋がりについて調べていくうちに、海洋熱波という問題にたどり着きました。海洋熱波とは、表面付近の海水温が極端に高い状態が数日から数カ月続く期間のことで、それは数千キロメートルにも及ぶことがあります。最近では、 二〇一四年から二〇一六年に米国海岸沖で発生した海洋熱波(ブロブ)が有名です。二〇一五年の夏から二〇一六年の春にかけて、六万二千羽のウミガラスがカリフォルニアからアラスカの沿岸に瀕死または死亡した状態で打ち上げられました。これは、海洋熱波が原因だったと指摘されています。熱波のためにまず植物プランクトンが滅少し、食物連鎖の各段階に影響がでて、ウミガラスの餌が減少したと考えられるからです。実際に死んだウミガラスの数は確認されたよりもはるかに多く、百万羽に上るだろうと推定されています。また、オーストラリアのシャーク湾では、湾の生態系を保っていた豊富な海藻が失われ、イルカの生存率が十二パーセント低下していることが判明しました。イルカは本来、環境の変化に順応しやすいと言われる海洋哺乳類ですが、このような突然の熱波には大きな影響を受けていることがわかりました。
 日本の海域でも水温の漸進的な高温化により、生態系の変化が確認されています。九州西側、四国南側で熱帯性のアイゴ、ブダイ、イスズミなどが定住魚となり、温帯性のサンゴ礁に生息する魚類を圧倒して繁殖し、海藻を食べ尽くして藻場を消滅させる、いわゆる「磯焼け」を引き起こしているのです。
海洋熱波による基盤種の喪失は、人類にとってとても有害な結果をもたらすことになっていきます。なぜなら基盤種は、そこに生きるさまざまな海洋生物を支える存在であるからです。そしてその海洋生物のおかげで、人間は多くの生態系サービスを作り上げ提供することができているのです。例えば、数多くの海洋生態系が漁業や遊漁を支え、炭素貯留や栄養塩の循環を行い、観光やレクリエーションの場を生み出し、文化的・科学的意義を持っています。これからの生態系の機能はすべて、僕たちの社会に多大な利益をもたらしています。これが減少あるいは消失するということは、沿岸地域で海洋生態系に依存して生きている何億、何十億という人々の生活に負の影響を及ぼすことになってしまうのです。
 地球温暖化が進むにつれて、深刻な熱中症問題や感染症の増加など、人体に影響を及ぼすあらゆる問題が発生しています。この陸地で目にしているのと同じことが、おそらく海の中でも起きているのです。私たちの知らないところで犠牲になっている海洋生物が、ほかにもたくさんいるのかもしれません。
 海を守ることが地球や僕たちを守ることに繋がります。海洋生態系を健全な形で維持するために僕たちが実行できることは何なのでしょうか。まずはみんなが現状を知ることだと思います。そのためには、一人でも多くの人が真剣に調べ、自分の意見を添えて発信することが大事です。
 気候変動の影響の緩和は、これからの大きな課題になりますが、僕たちの行動で変えていけるはずです。便利さにとらわれず、温室効果ガス排出の意味のある削減を目指していくことが重要なのだと思いました。

2020年12月02日