銀賞 海とともに生きる

近畿大学附属和歌山中学校 2年 淵田 梨代

 海は私たちの生活にとって、昔から必要不可欠な存在である。食糧である魚の確保、観光業の面でもお世話になっている。だが、近年話題になっている海の環境破壊や汚染はもともと私達、人間が原因だ。心ない人間の小さな行いが積みかさなって何の罪もない生き物が苦しめられている。
 数ある海洋汚染の原因の中でも私達の身近にあり、普段何気なく使っているプラスチックに注目した。
 マイクロプラスチックというものを知っているのだろうか。これは海に流れついたプラスチックが長い年月をかけて、紫外線によって小さく分解された、直径五ミリ以下のものを指す。私たちの学年では地元の海岸に行ってプラスチックごみを回収し花王株式会社の皆様と協力して、回収したプラスチックごみを色々な商品に生まれ変わらせる活動をしている。その一環として砂浜に埋もれているマイクロプラスチックの調査もしているのだが目でぎりぎり見えるか見えないかぐらいの大きさのプラスチックが見つかった。それぐらいの大きさだったら魚も餌と間違って食べてしまうのもおかしくはない。「まあ、所詮、海の話で私達には関係はない。」と思う人もいるだろう。そんな甘くはない。その魚を食べているのは誰だ。それは人間だ。人間がしたことはそのまま人間に返ってきている。まさに自業自得とはこのことだ。
 では、いったい人間は、どのくらいの量のプラスチックを食べているのか、気になったので調べてみた。「人間が体内に取り込む微小なプラスチック片は一週間当たりに五グラム、クレジットカード一枚分に相当する」という。聞いただけで吐き気がする。だが幸い体内に取り込まれたプラスチックは排泄されるため問題はないという。しかし、プラスチックに含まれる添加剤と呼ばれる化学物質の人体への影響が懸念されている。マイクロプラスチックが生物の体の中に入っていって有害な物質が溶け出してくることで、その生物を中から攻撃する、運び屋だ。
 もう一つ疑問に思ったことがある。プラスチックはどこまで小さくなることができるのか。現代の技術では、ナノプラスチックという粒子が発見されている。細菌のサイズまで小さくなると人体に吸収されるリスクが高まっている。実際にナノプラスチックの胎盤への影響を調べる実験ではナノプラスチックが胎盤組織に入り込んでいることが分かっている。ナノプラスチックが胎盤組織に長い期間あると大切な機能を妨げ、赤ちゃんに必要な栄養素やホルモンが十分に届かないなど悪い影響が出る可能性があるのだ。
 「そもそも今どのくらいの量のプラスチックごみがあるのか。」疑問に思った人もいるだろう。既に世界の海に存在しているといわれるプラスチックごみは、合計で一億五千万トンとされている。二〇五〇年には海の魚の総重量を海洋ごみが大きく上回るという。
 マイクロプラスチックが広がっているのは海だけではない。風に乗って運ばれる汚染物質が封じ込められている樹氷。その中にはスギの花粉と同じくらいの大きさのマイクロプラスチック。ふわふわ地球上を漂っているのだ。これはもう確実に吸いこんでいると言っても良いだろう。
 そんなプラスチックごみを減らすためにどのような対策が進められているのか、インターネットで調べてみた。すると、とある国では複数の企業が協力し、使い捨てごみを出さない取り組みが進められているそうだ。それがおもしろい発想だったので少し紹介しようと思う。それはLOOPと呼ばれる、循環型プラットホームだ。例えば、消費者がオンラインで商品を注文すると、メーカーが開発した、何度でも洗って使えるステンレス製の容器につめられて、家に届く。使い終わった容器は玄関に置いておけば、配達員が回収。容器は洗浄され、再利用されるという仕組みだ。これなら、いちいち容器を洗うこともなく、ごみ捨ての量も少なくなって手間が省けるので、苦労することなくリサイクルができる。これは便利で、かつ一石二鳥なので日本でも導入すべき仕組みだ。
 私たちが暮らす環境を守ってくれている海が深刻な状況にある。よりよい生活を送るためにも小さなことから始めるべきである。後から後悔しても遅い。汚染がなくなる未来がその先にあると信じて一人一人がリサイクルに取り組むべきである。

2021年12月18日