佳作 答志島で学んだこと

東近江市立愛東中学校 3年 村山 鈴音

 「何度も拾っても、朝起きて海を見ると、ゴミは増えているんです。」島の人が私たち、海ごみ拾いのボランティアに向けて言った言葉が今も忘れられない。その島は答志島といい、伊勢湾にある。年々、漂着する海ごみが増加している答志島には、漁師さんのSOSから始まった「22世紀奈佐の浜プロジェクト」という海を豊かにする活動が行われている。私がこの島の現象を知ったのは最近で、正直、私の海への関心や知識は無いに等しかった。その状態で参加したボランティアで、私は自分の無責任さと愚かさに気づいた。「海をきれいにしよう」と行動する島の人たちの姿勢は私に様々なことを教えてくれた。「現状」を知ることは第一歩であり、そこから関心を持ち、海洋問題は「自分事」であると知らなければならないのだ。その事を答志島での体験を元に伝えようと思う。
 初めに、答志島の現状について伝えたい。三重県鳥羽市に位置するこの島には、年間自然ごみを含め、約3千トンのごみが漂着している。しかも、鳥羽市においては、伊勢湾流域を発生源とする“国内”で排出されたごみが流れているそうだ。そして、これらのデータ以上に私が伝えたいのは、私が実際に見た島の姿だ。島に着くなり見えたのは港を隅から隅まで埋めつくす流木とプラスチックごみ。漁船が行き来するその港では、作業に支障が出るため、漁師の方が大型機械でごみを回収していた。しかし数日でごみがまた留まるためその作業の繰り返しだ。しかし、普段使用されない浜はもっとひどい。大量のプラスチックゴミの他、靴やボール、冷蔵庫までもが漂着するのだ。そして留まった流木とごみを住処とする大量の虫と悪臭。この状況に私はあんぐりとしていたのを覚えている。本当なら恩恵と安らぎを与えてくれるはずの海が、逆に島の人々に負担と不安を与えていた。絶えず日々流れ続けるごみをボランティアが拾うのには限度があり、持続的でない。では、島の人の生活を守るために何ができるか。それは、この問題を「自分事」と捉え、事実を知ること。その事実を2つ紹介したい。
 一つめは、マイクロプラスチックの存在だ。このゴミの存在は、私の海ごみへの意識を一変させた。まずマイクロプラスチックとは、目に見えない小さなごみの事で、大きく2つに分けられる。一つは化粧品や歯みがき粉、ボディケア用品など幅広いアイテムに使用されるマイクロビーズだ。この球体は小さすぎる余り、排水フィルターを簡単にすり抜け、川や海に流れてしまう。2つめは、プラスチック製品が環境中に流出し、紫外線などによって細かくされたプラスチックだ。水田やスポーツ施設を発源とし、ポイ捨ても大きな原因だ。これらのマイクロプラスチックは魚が捕食するなど、生態系に大きな影響を与える。魚を食べる私たちも例外ではない。そして怖いのは、自分の知らない内にごみを流している事。一度家のケアアイテムなどを確認してみてほしい。しかし今の日本で100%の対策は難しい。海外では進んでいるこれらの規制が日本にはないのだ。そのため、今は消費者は商品の選択に努め、早く規制されるよう、声を上げるしかないだろう。
 2つめはごみが海にたどり着くまでのプロセスだ。マイクロプラスチック以外にも、全ての人がごみを流す場面は、実はいくつもある。例えばつい落ちたごみ。それは風などに飛ばされ、雨とともに近くの排水溝へと流れていく。やがて川をつたって海へ流れていくのだ。こうして街から流れたゴミが、海洋ごみの8割を占めると言われている。私は、夏休みの夏祭りや海などの楽しみに、深刻なごみ問題が伴なっていることにやっと気づいた。イベント中はつい気が抜けてその場にゴミを置いていく。そんな時はなかっただろうか。その怠けの延長線上には、島の人や生き物の悲しみがあることを忘れないでほしい。
 ここまでで私はとにかく「伝えること」だけを考えた。それは、答志島であらゆる体験をした私にできることだと思ったからだ。きっと前までの私のように、海の現状を知らない人はたくさんいる。海の近くに住んでいない私は、直接海を助けることはできないが、それ以外にもできる事はたくさんある。だからこれからも海洋問題について調べ、誰かに伝えつづける。それが誰かのアクションを起こすきっかけとなり、島の人たちがきれいな海を見れるようになることを心から願う。


2023年12月07日