守山市立守山中学校 2年 中浦 夢花
私は水族館が大好きだ。今まで、たくさんの水族館へ足を運んだ。水族館に潜る時、ひとつの海にお邪魔する感覚で目の前に広がる青い世界に思わず時間を忘れてします。どの水族館も私の記憶の中でずっと輝いている。
去年の夏、ずっとこの目で見てみたかったシャチを見に、名古屋港水族館へ行った。こんなに大きな生物が海にいるなんて・・・と思った。圧巻の大きさだった。国内最大級の体長六メートル、体重三.七トンのシャチが飼育されている大きな水槽は、怖いくらい海の中にいるようだった。この子は何か感じているのかな、毎日人間に見せ物にされて、大きな水槽でひたすら泳ぎ続けるってどんな気持ちなのかな。でも海に出たことがないなら知らないままの方がきっと幸せなんだろう。なんて考えながら、ただ時間が過ぎていく。私は、シャチの姿に心を奪われてしまった。閉館間際、寂しそうにこっちを見ているようだった。また来るね、と心の中で呟いた。そして二千二十五年八月三日、名古屋港水族館で飼育されていたオスの「アース」が亡くなった。悲しかった。もうアースに会えない現実が受け止められなかった。日本で唯一のオスがいなくなってしまったことで、日本でのシャチの繁殖は現在不可能となった。水族館で飼育されているシャチの繁殖は、野生からの捕獲が国際的に困難であることや、血縁関係の問題などから今後の展望はない。だから私はいま日本にいるシャチに会いたいと強く思った。二千二十五年八月現在、日本で飼育されているシャチは、名古屋港水族館、鴨川シーワールド、神戸須磨シーワールドのわずか三つの水族館だけだ。そして今年の夏は、神戸須磨シーワールドに行った。須磨シーワールドの目玉はシャチのショーだ。シャチのショーが始まる前、館内を回って水族館でしか見れない生物に会えた。どの展示も魅力的で時間が過ぎていくのが本当に早かった。その中でもクラゲの展示が特に印象的だった。暗いところに少しだけ光が差し込んでいる水槽が怖いようで綺麗で見とれてしまう。広い水槽の中にゆらゆらとしていた。クラゲって脳も心臓もないのに生きているのが不思議。喜びもストレスも、怒りや悲しみすら感じない。死ぬ時もいつの間にか水に溶けて消えてしまう。儚く、綺麗な生物だ。自分の美しい姿で誰かの心を癒していることに気づかせてあげたい、と考えた。そしていよいよシャチのショーが始まった。シャチとトレーナーさんとの息の合った姿に感動した。シャチがトレーナーさんの合図を受けとり大きな体で水中から飛び出し大きな水しぶきが客席に降り注ぎ、会場中が歓声に包まれた。大きな体からは想像できないほどしなやかな動きに驚いた。夢中で見ている間に、ショーは終わった。ショーが終わった後誰も目を向けていない大きな水槽で泳いでいるシャチは何を考えているのだろうか。
その日の夜、私はふと思った。安全で餌が十分に貰えるが人間のために作られ展示物とされ生きていく水族館か、自由だけど生き抜くのが簡単でない海、どちらが生物にとって幸せなのだろうか、と思った。現在の海の主な問題点は、海洋プラスチックごみ汚染、海洋資源の減少、海の酸性化、水質汚染の四つだ。この問題の原因はすべての私達人間である。人間が捨てたプラスチックごみが海に流出し、海洋生物への悪影響や景観の悪化を引き起こしている。特にマイクロプラスチックは海流によって運ばれ、水深二千メートル付近の深海にも蓄積している。他にも、生活排水や工場からの未処理排水が川を通じて海に流れ込み、有機物による赤潮の発生や、有害物質による生態系への被害を引き起こしている。本来なら雄大で美しいはずの海も、今は人間のせいで傷ついている。こんな海を、生物達はどう感じているのだろう。こんな海に、あなたなら住みたいと思うだろうか。それなら海よりも展示物として生かされる水族館の方がまだ良いのかもしれない。けれど、それは、人間が考えた答えでしかない。本当はどちらが幸せなんて誰も分からない。ただひとつ言えるのは海で生きる生物が少しでも生きやすいように、私達が海を綺麗にしてあげることだ。口で言うだけなら誰にでもできる。でも大切なのは行動に移すことだ。だから、少しでもいいから考えてほしい。これは他人事でなく、私達自身の問題だからだ。今の状況から目をそらさず、現実を受け止める必要がある。
海を守るために、私達にできることは何か。どうか一度考えてみてほしい。そしてその答えを、あなたは本当に行動に移せるだろうか。
大水槽で泳ぎ続ける魚。この子達は幸せかな。

