金賞 謎多き海の月、くらげ

京都市立北野中学校 2年 清水 珀登

 僕は小学2年生の夏休みに生まれて初めて海に行った。天橋立を望む日本海だ。そこで砂浜に打ち上げられたクラゲを発見。今思えば、水クラゲだったような気がする。クラゲは危険生物と認識していた僕は、思わず距離を置いた。そしてもう一度よく観察した結果それは、死んでいると確信した。海に戻そうか、砂に埋めようかと少し迷った後、砂だらけのクラゲを網ですくい上げると砂を掘って埋めてやった。思ったより、手にずっしりときたことと水分量の多いクラゲのことだから、すぐ小さく乾燥してしまうのかなと考えたことを覚えている。
 今回、海について書くということなので初めてクラゲを見た時のことを思い出し、少し疑問点もあるのでクラゲについて書いてみようと思う。まず、調べてみたところ、刺胞動物と有(ゆう)櫛(しつ)動物に属する動物を総称的にクラゲという。大きさ形態とも変化に富んでいるが体は透明でゼラチン質からなり、基本的には浮遊生活に適した体型である。漢字では水母・海月と書き、英語ではジェリーフィッシュ(Jellyfish)という。どちらも形態をよく表していると思う。クラゲの体は95%が水分でできていて、脳はなく口と肛門が一緒になっている。クラゲの究極の武器はその触手で、ほとんどの種類が触手に刺胞細胞と呼ばれるトゲを持つ細胞を持っている。何らかの刺激を受けると、この細胞の内圧は150気圧にもなり破裂して刺糸と呼ばれる針を高速で打ち出すのだ。これは自然界で最速の動きであり、なんと弾丸よりも速いのだという。この武器は小さい魚などの獲物を捕らえるために進化したわけだが人間が刺されると「少し痛い」位のレベルから数分で死に至る「オーバーキル」のものまで幅広い。
 僕が疑問に思ったのは、この水分95%のクラゲが塩分濃度の高い海にいて普通に暮らせるのはなぜかということだ。クラゲと水分量が近いナメクジは塩をかけると、浸透圧によって体からどんどん水分が出て行ってしまい、脱水により死んでしまうこともある。しかし、同じ水分量のクラゲが海の中で生きることができるのは何となく不思議に思えた。調べたところ、ナメクジの場合は皮膚のようなものがなく、浸透膜になっていて、塩を掛けると体内と体外の液体の濃度に差ができてしまい、その差をなくすために体から水分が出て体外の塩と混ざり合った体液の濃度と体内にある体液の濃度を一定に保とうとする。その結果ナメクジは脱水するようなのだ。一方、クラゲの場合は自分の体液の塩分濃度に適した海水で生活しているため海にいても脱水しないのだ。逆にクラゲを淡水に入れると塩分濃度に差ができて、クラゲはその差を埋めようと水をどんどん体内に吸収していき、イオンバランスなどがくずれ死んでしまう。これで僕の中の疑問は少し解けたように思う。
 クラゲを調べたことでちょっとこれはすごいなと思ったのは、刺糸という針が自然界で最速の動きをし、弾丸よりも速いということだ。普段はゆったりと浮遊し人間を癒してくれるクラゲのどこにそんな力が秘められているのだろうか。ほとんどが水分で脳のないプランクトンのようなクラゲだが生きるためのスキルをちゃんと持っているのは本当にすごいことだと思った。それにクラゲはたった1~2%の有機物で大きな体を動かしていることも驚きだと思った。
 地球の人口の爆発的な増加に伴い問題視されているのが食の資源不足だ。クラゲは食料として見てみると、タンパク質が多く脂質、炭水化物が少なく、ビタミンB12と銅の成分が高く糖質は0。ほとんど味がなく、食感を楽しむ。クラゲは漁業にも被害を与えることがあるほど、異常繁殖することもあるという。昆虫食の栄養素にはかなわないと思うが、乾燥させ塩蔵したものの他にも食べ方を研究して、もっと利用できるようになるといいなと思った。

 

2019年12月01日