銀賞 富山湾の神秘

近畿大学附属中学校 1年 幾島 誉

 僕の祖父の家は富山県にあります。
 富山湾はすり鉢のような地形で、黒部川などの多くの河川が森からの栄養を海底に送り込むため、多くの魚が繁殖出来る条件が整っています。また、海洋深層水の寒流と対馬海流による暖流とが混じり合い、日本海に生息する約八〇〇種類の魚のうち、富山湾では約五〇〇種類の魚が生息していることから「天然のいけす」と呼ばれています。
 その中でも有名なのは、早春にとれるホタルイカです。ホタルイカは全国でも数ヶ所しかとれず、浜や岸から網ですくうことができるのは珍しい現象で「身投げ」とも呼ばれています。なぜ身投げが起こるかは諸説ありますが、普段は月の光で方向を測っているホタルイカが、月のない夜に方向感覚を失って岸を目指してしまい、結果的に身投げになってしまうというのが有力説です。また、ホタルイカは国の天然記念物にも指定されています。
 ホタルイカは発光できることで有名です。発光器が腕の先と腹側についており、皮膚にある発光器は、ひれを除く全身に七〇〇~一〇〇〇個あって青の光を放ち、幻想的な光景になります。次にホタルイカが発光する理由は、外敵に対する威嚇・幻惑・仲間とのコミュニケーション・餌寄せをするためなどいわれています。そして、ホタルイカが湧きやすい条件は、波が落ちついている、最高気温が数日続いて安定している、満潮の頂点が深夜から明け方にある、軽い南風が夜に吹く、暖かく穏やかな日が続いている、数日大きな雨が降っていないなどの6つがあり、これが全て揃うのはかなり難しいです。見に行くときのポイントとして、時期は三月~五月、時間帯は二十一時くらいから翌未明にかけて、防寒対策もしっかりしていく必要があります。
 僕は家族でホタルイカを取りに行く事にしました。四月の新月のタイミングで一回目は発現しなく、一匹のみの結果となりました。次の日の二回目は二匹で、とても残念だったので、再挑戦することにしました。一ヶ月後の次の新月はちょうどゴールデンウイークだったので、さらに二回挑戦する事が出来ました。一回目は風が強く波が荒れていたので危険と判断し断念しました。二回目も波が高かったけれど、風は比較的穏やかだったので、強行しました。頭にライトを付けかっぱを着てガムテープで補強して、足にくつカバーを付けたにも関わらず、とても、濡れました。そして、くつカバーに入った水は、初めは冷たかったけれど、後の方には、暖かく感じました。沖の方に行くと波が高くなり、何回も転びそうになりました。
 肝心なホタルイカは二十二時頃には少なかったけれど、午前二時頃から沖の方からいっぱい泳いできました。これを釣り人達は「湧く」と表現するそうです。取り始めから朝の四時まで頑張って取り、バケツ一杯分ぐらい取れました。家に帰って、母がホタルイカをゆでてくれましたが、僕は一匹食べて内臓がグニュグニュして気持ち悪かったので一匹で十分でした。来年も装備を整え今年より多くホタルイカを取りに行きたいと思います。
 ホタルイカ以外でも富山湾には、珍しい現象が起こります。
 例えば、魚津市で観測された「上位蜃気楼」です。「上位蜃気楼」は春の蜃気楼とも呼ばれています。冬によく見る「下位蜃気楼」とは異なり、魚津に限られた地域で、年に十回程度しか出現しない珍しい現象です。
 そして、蜃気楼がなぜ起きるのかというと、大気中を進む光が屈折するからです。本来は、大気中に温度差がないときは光はまっすぐ進み、風景や物体と僕たちの目に入る光は一直線に結ばれます。一方、大気中で冷たい空気と、暖かい空気が重なっているなど、温度差があるときは、光は温度の低い方へ屈折してカーブしながら僕たちの目に届きます。この屈折により、風景や物体が逆さに見えたり浮いて見えたりするのです。
 両親はこの上位蜃気楼を見たことがあり、建物が細長く見えたと言っていました。
 僕もどんな風に見えるのか興味があるので、チャンスがあれば見たいと思います。

2019年12月01日