佳作 ボクらのふるさと

帝塚山中学校 1年 奥田 悠嘉

 「ふるさと」は生まれ育った土地。人によって、ふるさとが違う。しかし、人類の「ふるさと」は海なのだ。海はボクらのふるさとなのだ。
 「水の惑星」と呼ばれるほど、地球の面積のうち70%が海なのだ。
 約46億年前に地球ができたとき、生きているものが何ひとつない世界だった。地球で最初の生き物は約38億年前に海から生まれた。
 人類が現れたのは、さらにずっとあとのこと。人類の祖先が海に住んでいた名残は人の体の中に見ることができる。生まれる前の赤ちゃんは、お母さんのおなかで羊水に守られているのだが、その成分は海水の成分にとてもよく似ているのだ。
 海は食べ物やエネルギー、色々な資源を提供し、人や物を運び、地球全体の気候のバランスを取り、酸素を送り出すなど様々な役割を果たしている。
 人類も他の生き物も、ずっと元を辿れば海が「ふるさと」なのだ。そして、素晴らしい技術が発達した今でも、やはり海なしではボクらの地球の生命は生きていけないのだ。
 ところが、ボクらの命を生み出して育む海は今、人類によって、傷つけられ、異変が起こっている。
 地球全体の大気や海水の温度が長期的に上昇する現象、いわゆる「地球温暖化」は、人類の活動によって、出される温室効果ガスの増加が原因だといわれている。
 地球温暖化で深海の酸素が減少しており、生態系に悪影響を及ぼす恐れがあると専門家は懸念する。温暖化の影響が表れやすいとされる日本海に、世界の注目が集まっている。
 日本海では冬場にロシア極東から冷たい季節風が吹き酸素が豊富な表層の水が冷やされ重くなって深海へ沈み込み、魚にとってすみやすい環境だ。ところが、温暖化で季節風の冷たさが弱まり、表層水の冷却が不十分になって沈み込みが鈍くなったため、酸素が深海に供給されにくくなっている。よって1960年代から日本海の深海酸素濃度は低下し、水温も上昇を続けている異変の引き金は地球温暖化であることが分かる。
 深海の酸素はロシア極東が厳冬になると増加に転じることも温暖化の影響を裏付けている。このまま温暖化が続くとどうなるのか。「仮に深海への酸素供給が完全に止まったとすると、100年で無酸素状態に陥る」と専門家が警鐘を鳴らす。
 また、海が人類の出すゴミによって汚染されている。
 環境省の調べによると、世界では毎年少なくとも800万トンものプラスチックごみが海に流出しているという。一見海洋ごみとは関係ないように感じられる街ごみも、実は海へ流れ出ている。投げ捨てなどにより街に捨てられたごみは雨と共に排水溝へと流れ、やがて川をつたい海へ流れ出るのだ。そのようにして街から流れたものが海洋ごみの8割を占めるといわれている。
 この海に流出している大量のプラスチックごみは当然海で暮らす生き物に悪影響を及ぼしている。例えば海で死んでしまったウミガメ102頭の内臓を調査したところ、全ての個体からマイクロプラスチックをはじめとする合成粒子が800以上見つかった。
 現在世界の海に漂うごみの量は総計1億5000万トンに達している。そしてこの瞬間もどんどん増え続けている。何もせず、このペースで進めば2050年には魚よりプラスチックごみの量が多い海になることが予測されている。
 地球表面積の約7割を占める海は、全ての命のもとでふるさとである。海は様々な恵みをもたらしてくれた。しかし、その海が今では汚染され、生物がすめなくなった所もある。
 海、ボクらのふるさとを守るための様々な取り組みが世界中で始まっている。
 「海の憲法」と呼ばれる海洋法条約には海を守り海の汚染を防ぐための決まりが定められている。フランスでは使い捨てプラスチック製の皿などの使用を禁止する法律を世界で初めて制定した。日本では海洋汚染を防止する法律をつくって船からの油排出等を禁止している。では、私たち一人ひとりができることは何だろう。次の2つの行動を心がけるだけで海の環境も随分改善されるだろう。
 外で出たごみは家に持ち帰る、または決められた場所で処分する。
 毎日の暮らしの中でできるだけごみを出さないようにする。例えばマイバッグを持ち歩くなどを心がける。
 海はボクらのふるさと。魚よりごみの量が多くなる日が訪れる前に私たち一人ひとりができることから始めてみよう。海に感謝、海と生きる。みんなの意識が変われば、豊かで美しい海を未来に引き継げるはずだ。
 海はボクらのかけがえのないふるさとだ。

2019年12月01日