佳作 サンゴ礁の危機

高槻中学校 2年 田中 勇伍

 今、海を彩るサンゴ礁が危機に瀕しています。
 だれもが聞いたことである「地球温暖化」これが今、「海のオアシス」や「海の熱帯林」などとも言われているサンゴ礁に多大な被害を与えており、世界各地のサンゴ礁が「白化」していっています。
 なぜこのようなことになっているのでしょうか。もともとサンゴの体内には褐虫藻という藻類が生息して、光合成を行っています。しかし、この褐虫藻は海水温が二度程、高くなるだけで死滅していまい、それに伴ってサンゴの色が抜けてしまいます。また、光合成を行っていた褐虫藻が死滅することにより、サンゴに栄養が行き届かなくなることで多くのサンゴが死んでしまいます。
 また、サンゴ礁が白化してしまうことによる周りの海への影響も軽視できるものではありません。サンゴ礁は小魚などの住みかで、その住みかがなくなってしまえば魚は激減してしまいます。また、サンゴ礁は海洋生態系の中で重要な役割を担って、海中の二酸化炭素の量を調整するという大切な役割を持っており、最終的には海洋全体への影響が出てくることになります。つまり、サンゴ礁は海にとって必要不可欠な存在であり、海から多くの恩恵を受けているぼくたち人間が大切にしていくべきものなのです。
 では、ぼくたちはどのようにすればサンゴの絶滅を止めることができるのでしょうか。もともとサンゴが絶滅の危機に瀕しているのは温暖化だけではありません。例えば、土砂の流出などの環境汚染や、二酸化炭素が海水に溶け込むことによって起こる海洋酸性化などがあります。そして、それらのほとんどがもとをたどれば人の手によるものなのです。ぼくは、このことを知ったとき、どうしようもなく悲しい気持ちになりました。しかし、それとともに人間の手によって汚してしまったのであれば、人間の手によってかつての自然を取りもどすことが可能なのではないか、という考えを思いつきました。実際にそのような活動を行っている団体などについて調べたり本を読んだりしてみました。そして結論は、一度壊してしまった環境を元にもどすことはとてつもない時間と労働力が必要だということでした。それも世界の三分の一のサンゴの種類で絶滅の危険性があるという現在では尚、大変です。しかし、何もできることがないというわけではありません。海洋保護区の設定や、土砂の流出などを減らすといった保全策や、サンゴの増殖、移植などの再生策、サンゴ自身が環境の変化に適応することができるようになるための研究なども可能です。それらは、個人で行うにはあまりにも大変なことです。しかし今、このようなときだからこそ、あきらめずに取り組む必要があると思います。元は人間の手によって汚れてしまった自然、これからぼくたちは、責任を持ってサンゴが生きることができる環境、そしてサンゴ自身を取り戻す必要があると思います。

2019年12月01日