大阪教育大学附属平野中学校 2年 村上 夢奈
私の家族は、みんな海が好きなので私も記憶には残っていないくらい小さな時から、潮干狩りや海水浴や釣りによく行きます。本来ならこの時期は潮干狩りを楽しんでいるはすでしたが、今年は新型コロナウイルスのため自粛中で残念ながら行けそうにありません。だから、私が初めてマテ貝に出会った時の衝撃を思い出しながら書きたいと思います。
潮干狩りといえば、アサリやハマグリをイメージする人の方が多いと思います。私もそうでした。でも、兵庫県たつの市の新舞子潮干狩場に行った時から、そのイメージが変わりました。他の人が、スコップのようなもので土を掘って何か白い粉をまくと、土の中からニョキっと何かが出てきてそれを手でつかんで採っていたのです。よく周りを見てみると、その人だけではなく他の人達も同じようなことをしていて、知らないのは私達だけという感じでした。お父さんが売店の人に聞きに行くと、ニョキっと出てきた何かはマテ貝という貝で、白い粉は塩ということがわかりました。お父さんが売店で塩を買ってきてくれたので、見様見真似で塩をまいて挑戦してみましたが何も出てこず全く採れませんでした。
家に帰ってマテ貝について調べてみました。マテ貝は二枚貝綱マテガイ科で、大きさは殻長十から十二センチメートル程、殻高一.六センチメートル程で、この殻の形状が特徴的で左右の殻がそれぞれ極端に細長い長方形になっており、殻が薄い貝です。表面の色は生息環境などにより個体差がありますが、艶のある薄い茶色から濃い茶色で細い成長線があります。竹を縦に割ったような細長い形状から、カミソリ貝の別名もあるようです。確かに、浜辺に竹のような枯れ木のような物が落ちていたのを思い出しました。マテ貝は、東北地方辺りから南の内湾に多く、潮間帯の砂泥底に殻を縦に深く潜らせて生息します。満潮時には、砂泥底から水中に先端を出し水管を伸ばしますが、干潮時には深く潜っています。だから、干潮時に巣穴に塩を振り込むとマテ貝は満潮と間違えて飛び出してきます。新舞子潮干狩場は、干潮時には五百メートル以上も潮を引く遠浅の海岸なので、マテ貝採りで最適な場所だったのだとわかりました。そして、たくさんの人が持っていたスコップのような物は「じょれん」と呼ばれる田畑でも使用される道具で砂の表面をかくための物ということもわかりました。
調べれば調べるほど、マテ貝採りにリベンジしたくなり翌年まで我慢できず、気付けば翌週も家族で新舞子潮干狩場へ向かっていました。お父さんとお兄ちゃんは午前中からアサリやハマグリを一生懸命に採っていましたが、私は潮が引くのが待ち遠しくて、あまり集中できず頭の中はマテ貝のことでいっぱいでした。そして潮が引き、砂浜が広くなってくるといよいよメインイベントです。売店で借りてきたじょれんで、お父さんが砂の表面を削ると穴が出てきました。その穴に、前日に準備したマヨネーズの容器に移し替えて持ってきた塩を入れてみました。そして、じっと穴を見つめていると十秒ほどして、ヒョコっとマテ貝が顔を出しました。(わぁ、本当に出てきた。)と喜んでいると、また一瞬で砂の中に帰ってしまいました。家族で大笑いしました。笑っている場合じゃないと再チャレンジし、今度はヒョコっと出てきた所を手でガシっと掴みました。すると殻が手の中でグチャっとなったのがわかりました。(そうや。殻は薄いんやった。)出てきた瞬間に素早く採ることしか考えておらず、力が入って強くにぎりすぎてしまいました。素早く、そして優しく採らないといけないので思っていたよりコツがいるんだなぁと思っていると、横ではお兄ちゃんが
「採れた!」
と、嬉しそうにマテ貝を持っていました。初めて見るマテ貝は貝とは思えない形をしていたけど、とても嬉しかったことは覚えています。その後も家族でマテ貝採りに夢中でした。お父さんがじょれんで穴を探し、お母さんがその穴に塩を入れて、私とお兄ちゃんが出てきたマテ貝を採るという連携プレーに自然となっていました。マテ貝採りの面白い所は穴に塩を入れたからといって、全ての穴から出てくる訳ではないという所で、どの穴から出てくるかわからないので集中力も必要です。まるで、もぐらたたきをしている様な感覚なので採れた時の達成感が快感です。あの快感は忘れられません。
きっと他の人も、一度あの快感を経験すると、マテ貝採りに夢中になると思います。今年は、潮干狩りに行けませんが来年こそは、新舞子潮干狩場に行けるのを楽しみにしています。