佳作 船舶解体

大阪教育大学附属平野中学校 2年 南 要

 船舶解体とは、業務、役割を終えた船舶をスクラップや再利用できる部品などに解体することです。
 昔は船はほぼ木でできていた為に解体作業もそれ程大がかりなものではなく行われていたが、現在では、FRPの船、軽金属製の船、鋼鉄製の船とさまざまな材料で作り方もさまざまになった分、解体作業も多岐に渡ります。
 第二次世界大戰後、日本では、大規模な造船ラッシュになったこともあり、各国で不要となった戦時中の軍艦などが多く持ちこまれて、解体されていました。特にアメリカからアルゼンチンやチリなどへ輸出された旧式戦艦の多くが日本で解体されたと言われています。しかし、二十世紀の終わり以降からは事情が変わり、インドや大きな砂浜で手作業で解体されるようになって、満潮を利用して砂浜に全速力で乗り上げて放置され、錆びた船を少しずつ切り取って消滅させていきます。まず備品の計器や時計など、そのまま転売できる部品を徹底的にはぎ取り船体にガスバーナーやタガネで切れ目を入れ、穴をあけ少しずつ切断していく作業でした。多くの作業員は素手に素足での作業の為、常に危険がともなっていました。しかしこの作業にはまだ問題点がありました。それは、廃船にはPCBや水銀、鉛が出てしまうことです。アスベストなどの有害な化学物質が使用されていた為に作業員や解体場所周辺の街の住民へも健康被害が懸念されています。それと同時に、波打ち際で行われる為、多くの有害物質や重油が海に流出していることも問題となります。また、廃船を海に沈め人工魚礁にする方法も過去にはありましたが、環境汚染の観点からとりやめになりました。
 このような危険作業や有害物質の流出から途上国への廃船輸出に対して批判も多くなったので、船舶は二〇〇四年バーゼル条約で有毒廃棄物と規定されました。その後二〇〇九年香港において、「シップリサイクル条約」が採択され、船舶解体はシップリサイクル条約に決められたリサイクル施設で行う必要があります。また、シップリサイクル条約の発効により、インベントリ(有害物質の量と場所)の作成が必至となりました。
 日本では、船舶解体業者は瀬戸内海を中心に六社が営業しています。現在の日本での解体業はドライドック(船体の検査や修理などのために水を抜くこと)または大型クレーンによる陸揚げ後、重機による、船体の切断作業が行われます。また、日本ではこの切断された船体の部品を、産業廃棄物と定め二十種類に分けられています。その中でも日本の企業は、細かく分類し、リサイクルできるのは新たな資源へと生まれ変わっています。しかしながら、二〇〇四年から新造ラッシュに建造された船舶が解体時期を迎える二〇三〇年頃には、世界的な船舶解体ヤードの不足が懸念されています。しかし、特定船舶の再資源化解体もかんたんにうけおえるものでもなく、日本では施設を立ち上げるにあたり、主務大臣の許可を取得し、五年ごとに更新する必要もあります。
 日本では、安全かつ、環境にも配慮された上で、解体が行われるようになっていますが世界の大半では、未だに人件費が安く規制のゆるやかな国々で行われている現場である業界の体質を改善する動きもあるが、国によってまちまちです。インドでは労働者の安全確保や環境保護が、以前よりも厳格に義務づけられるようになっています。ですが、二〇一三年、百九十四隻もの船舶が解体されたバングラデシュでは、解体は今も汚れ仕事で、その現場は危険きわまりない状態のままです。しかしその一方で船舶解体は今も巨額の利益が上がるビジネスなのも事実です。バングラデシュの平均的な船の解体には三ヵ月から四ヶ月かかり、約五億円の投資で約一億円もの利益が見込めるといわれています。これがパキスタンなら、同様の解体による利益は二千万円弱といわれており、大きな差があります。いずれにせよ、利益は船の九十パーセント以上を徹底的にリサイクルすることで生まれます。船の解体は、こうした発展途上の国では大きな雇用となっていますが、それと共に危険をともなう作業となっています。先進国がバックアップし、安全で環境に配慮した施設を作ったり、高い技術の指導ができると結果的に船舶業界の発展につながると思います。

2020年12月02日