佳作 海で働く船

大阪教育大学附属平野中学校 2年 城 陽

 今年に入って連日、テレビやネットのニュースは新型コロナウイルスのことばかりです。その話題の中で、マスク不足が問題になっていました。マスクのほとんどが中国からの輸入でまかなわれていたことを、ぼくは店頭から消えて初めて知りました。そこで、日本の輸送の一つである海の船について考えてみようと思いました。
 調べてみると、様々な船が海を運航していることが分かりました。狭い国土で、暮らしに必要な食糧の61%を輸入に頼っており、原油やガスなどのエネルギー資源の産出も無い日本です。しかし、輸入されてきた工業原料を加工してできた自動車や電気製品などは、外国からとても信頼されるものになっています。その運搬のほぼ100%が、船を使って運んでいるということでした。一台の自動車の製造にはエンジン、タイヤ、塗料など、二万から三万もの部品や材料が使われており、その部品や材料の原料を外国から輸入しているとなると、どれほど多くの国々との交流が行われているか分かります。ボディなどをつくる鉄鉱石を輸入するための専用船もあるそうです。また、でき上った自動車は一度に大量の自動車を運ぶために船の中がいくつかの階に分かれ、大きな駐車場のようになっていて、小型自動車なら六千五百台も積める自動車専用船もあるそうです。
 海にはこの他、外国から来る大型の外航船から貨物を積みかえて、あらゆる日本の港に運ぶ中小型の内航船も多く通っています。その数は、約五千五百隻。国内の貨物輸送の32%を占めており、日用品、石油製品、鉄鋼、セメントなどを運んでいます。
 輸送機関には内航船、自動車、鉄道、飛行機がある中で、国内貨物の約三割は内航船が運んでいるといわれています。一年間で、貨物量は三億三千万トン。10トントラックで三千三百万台分です。どうしてこんなに内航船が貨物の輸送に利用されるのでしょうか。ここで、疑問がぼくにわいてきました。その答えは、貨物量に運んだ距離をかけたトンキロという数値でみると、約三割の貨物が内航船で運ばれていることが分かりました。これにより、内航船がいかに長距離と大量輸送にぴったりかということを示していました。また、内航船はトラックの約四分の一のエネルギーの消耗ですむことや一度に大量の物を運ぶことができることから効率が良いことがありました。他に自然環境にもやさしく、約三分の一の二酸化炭素の排出ですむことから地球温暖化防止にもなっていることも上げられていました。
 海での船の利用は、これだけではありません。救急にもありました。二〇一一年に起きた東日本大震災の時には、救援物資の灯油やガソリン、日用品などを被災地にいちはやく届けたのは船だったそうです。船は、緊急災害の際にもぼく達の生活を守ってくれているのです。今年に入っては、世界中で新型コロナウイルス感染が急拡大している中で、病院船が出動している国もあります。この船は、病床数が足りなくなった病院の負担をカバーしようと動いています。ウイルスに感染した人々を、海の上で隔離したまま治療することができるのです。また、これは災害時にも同じで、被災地の病院の被害を考えた時、近隣都道府県の病院へ負傷者を搬送しようにも、道路が寸断されている可能性もあります。被災地の近くの海上に病院船を派遣し、そこに負傷者を搬送して緊急治療を施したり、応急処置を施した上で近隣の病院へと搬送すれば人命を救うことができます。
 このように、海は大陸と大陸でつながるよりももっと便利で可能性が限りなくあるものだと考えられます。島国の日本にとって、海は世界の国々との距離を感じてしまうこともありますが、海が世界の国々とつながっているように身近に感じさせてくれます。

2020年12月02日