金賞 未知の世界

吹田市立第一中学校 3年 山﨑 啓司

 「五メートル」と聞いて、みなさんはどう思いますか。試しに五メートル歩いてみると短い。階段を使って五メートルの高さまで登ってみると少し高い程度です。どちらも楽に達成できます。しかし、五メートルの深さまで潜ることはほとんどの人は簡単にはできないと思います。浮力がはたらき、耳に水が入ってきて、息も続かない水中で、手足も思うように動かせません。
 世界一高い山は標高八千八百四十八メートルのエベレストです。しかし、海の深さが世界一深い場所は約一万メートルほどで、エベレストをひっくり返してみても足りません。それほどまでに壮大な海には、まだまだ知られていないことがたくさんあります。
 地球は「水の惑星」と呼ばれ、たくさんの水が存在しています。しかし、この水のほとんどが海であり、人間が生活で使用できる水はほんのわずかしかありません。人間は体の約七十パーセントが水でできており、水が無ければ一週間も生きられないでしょう。人類と水は長い歴史の中、ずっと関わりあってきました。にもかかわらず、人間は地球の水のほとんどである海の水を飲むことはできず、海の中で生活することはできません。それどころか、おぼれて死んでしまう人もいます。
 東日本大震災では地震によって大きな津波が発生し、たくさんの人が亡くなりました。私は当時秋田県に住んでいたので、津波を経験した方の話を直接きくことができました。町が津波に飲まれていくところをただ見るしかなかったそうです。それを聞いて、海が凄く恐くなりました。
 一方で、海でしか獲れない魚もたくさんいます。新鮮な魚のおいしさは言葉で言い表すことができません。
 水は人を殺すことも、人を生かすこともあります。海は人に恵みを与えることも、人の幸せを奪うこともあります。姿を変えていく海への人間の接し方が重要になってくるのです。
 人間は多くの生物を陸上で観察することができます。鳥や昆虫、動物園へ行けば日本では見ることができない動物もたくさん見られます。しかし、地球の総面積の七割が海であり、陸は三割、つまり、海で暮らす生物は陸で暮らす生物より多いに違いありません。調べてみると、陸上で暮らす生き物が約百万種類なのに対し、海で暮らす生き物は約一千万種類ほど存在しているそうです。やはり海で暮らす生き物の方が多いようです。しかし陸の生物の十倍もの種類が海にいるということに驚きました。魚だけではなく、タコやイカなどの軟体動物、エビやカニなどの節足動物を含めて約一千万種類が既に発見されている海でも、一年に二十種類以上の新種が見つかっているそうです。まだまだ知られていない生き物が存在し、簡単に人間が調査できない謎に包まれた深海にすごく興味を持ちました。
 深海魚と聞くと、見た目が怖いというイメージを持つ人が多いと思います。確かに深海魚はものすごい水圧に耐えられるように一般的な魚とはからだのつくりが異なっていますが、ユニークな魚やかわいい魚もたくさんいます。しかし、なによりすごいのは、小指の爪くらいの場所に百キログラムもの圧力が加わっている深海で生きていける圧力対策と、暗闇の深海を生き抜く力です。
 深海魚は深海という苛酷な環境を生き抜くために、たくさんの進化、そして不要な器官の退化を繰り返してきました。獲物を捕らえるために光を自ら放ったり、圧力の影響を受けないよう、浮き袋を無くしたり、筋肉のほとんどを水分にして圧力に強くしたりと様々な「生きる工夫」が見られます。
 私たちが普段生活している陸よりも広く、未知の世界が広がっている海。いつも見ている海は、ほんの一部分です。とても身近なのにまだまだ知られていないことがある海に、とても興味がわいてきました。

2021年12月18日