佳作 オホーツク海

高槻中学校 2年 上原 悠希

 日本で唯一流氷が見られるのは、北緯44度にある町「網走」だけである。なぜ網走でだけ流氷を間近で見られるのか。それはオホーツク海の地理的状況にある。
 オホーツク海は四方を大陸と島に囲われており、そこにロシアからアムール川の水が流れこんでいる。オホーツク海が凍る一つ目の理由は、シベリアからの厳しい寒気がある。これは流氷を作り出すために必要な条件で、このシベリアの寒気は、マイナス40度にも達するそうです。
 二つ目の理由は、オホーツク海の表面に低塩分水の層があることである。主にアムール川から流れ込む水によって塩分濃度が極端に低い層で覆われ、その部分が寒気によって冷やされる。そうすると、冷たい水は密度が大きいので沈み、それより下の暖かい水と入れ替わる「対流」が起こる。しかし、低塩分水は冷えても、高塩分水よりは重くならないため2つの層の境よりは下に沈むことはない。そのため、この低塩分濃度の層だけで急速に凍っていく。この塩分濃度の低い層は、表層から50メートルの深さにわたって形成されているといわれています。この低塩分濃度層と高塩分濃度層の2重構造は、オホーツク海にしかないものです。
 また、オホーツク海は栄養の豊かな海でもあります。豊かな海である理由の一つがアムール川からオホーツク海に運ばれる鉄である。鉄は、窒素やリン、ケイ素といった植物プランクトンの生育にとって必要な栄養を、効率よくプランクトンが取り込むために利用される元素である。しかし、鉄は海水中にはほとんど存在しない。したがって常に別の場所から補給されなければならない。アムール川はモンゴルに源を持ち、4400キロメートルの距離にわたって中国とロシアの国境を流れる、世界屈指の大河である。中国・ロシアの平坦な大地を流れるアムール川は、その流域に広大な湿原をもっている。湿原は常に湿った状態にあり、植物が分解される際に酸素が使われるため、常に酸素が少ない環境である。通常は粒子として存在する鉄も、このような環境ではわずかながら水に溶けることができる。アムール川は、このようにして湿原で溶けた鉄をオホーツク海に運んでいる。
 しかし、せっかく長い距離にわたって運ばれた鉄も、オホーツク海に到達した途端、海水中の塩分と結合して、海底に沈殿してしまいます。ただ、流氷の下に高塩分で重い海水が出来、海底に沈殿した鉄は、この重い水によって洗い出され、沖合へ運ばれる。沖合には、南向きの強い海流が流れており、この流れに乗って北海道から千島列島、そして太平洋へと運ばれる。それによってオホーツク海は豊かな海になっている。
 オホーツク海が豊かなのは、流氷とアムール川とオホーツク海の地理的状態によって起こっている。私たちはこれを守っていかないといけない。

2019年12月01日