佳作 海の環境問題について

近畿大学附属和歌山中学校3年 糸永 帆花

 現在、「人口問題」「地球温暖化」「砂漠化」「酸性雨」など、人類の生存を脅かしかねない地球規模の問題が続出してきた。これらの問題は、海洋環境抜きでは語ることができない。なぜなら、膨大な量の水をたたえた海は、この地球環境の維持に大きな役割を果たしているからである。だが、その海にも多くの危機があるのだ。
 例えば、最近いろいろな場所で行われている埋め立てによる海の環境変化についてだ。この埋め立てをする理由は、大きく分けて2つにわかれており、1つは、新たに土地を造成するため、もう1つは、人々を津波や高潮から守るためである。しかし、この埋め立てにより、生物の生息の場が十分に与えられていないのだ。アユなどの魚は、海と陸の間に位置する干潟や河口湿地を、海と川などの塩分濃度が異なる環境になじませるための大事な場所であるため、埋め立てによる被害は大きいのだ。
 他にも、日本各地の岩礁海岸で「磯焼け」と呼ばれる海の砂漠化が問題になっている。海が砂漠化することに不思議に思うかもしれない。しかし、この砂漠化は日本だけでなく世界でも、現象する事である。ちなみに、この磯焼けという現象は、浅い岩礁海底や、藻場が衰退し、その結果、海藻や、海藻群落に依存するアワビやサザエ、ウニ、イセエビなどの漁業生産が低下する現象のことをいう。だが磯焼けにも多くの種類があり、海域や海底地形によってその様相はさまざまなのだ。このような自然のバランスの変化による磯焼けは、いずれは解決するが、人為的な要因によって発生する磯焼けはその要因を取り除かなければいけない。その要因とは、生活排水や産業排水の流入や土砂の流入によるものなのだ。
 今、2つの例を出した。海の埋め立て問題と「磯焼け」による海の砂漠化問題だ。要因は、分かっていても、解決法はあるのだろか。私はこの2つの問題を見ると、どちらも人間による行動が原因となっていることに気づいた。しかし、簡単にその原因を完全に取り除くことは不可能だ。私は、少しずつでもその原因に向きあうことが大切なのではないかと思う。そのためにも日本や世界中でいろいろな活動が行われている。
 分かりやすい例だと、海岸清掃だ。私もよく環境保護のため、ゴミ拾いをしている人をみかける。この海岸ゴミは、近年、中国、韓国、ロシアなどのプラスチック製ゴミが流れつくようになった。約20年前に、クリーンアップかごしま事務局が流出地と漂着地の関係を明らかにするため「ライタープロジェクト」が行われ、この結果により、東アジアの国のなかでも特に、地球規模の環境汚染である海洋ゴミ問題の加害者であることが分かったのだ。この事からも私たちは今後改善に向けた行動を積極的に行う必要があるだろう。
 他にも、子どもたちが海を守ろうと思ってもらえるためのイベントも行われている。新江ノ島水族館にある「なぎさの体験学習館」では子どもが海・自然・地球についてたのしみながら学べるプログラムがあるのだ。このプログラムは「自分で気づき、自分で考え、自分で想像してもらいたい」という気持ちから基本的には子どもたちのみで実施されており、子どもたちがもっている個性や感じ方の違いを尊重しながら、海の大切さを伝えているのだ。子ども以外にも、大人である市民が参加するイベントも行われた。防風林の松林をはさんで広い砂浜が連なっている湘南、平塚には何十年も行われている「漂着物を拾う会」というものがある。海岸に打ち上っている漂着物を拾い参加者で、集めた物について意見を交わしたり、拾うだけでなく、自然環境の変化も推察しているのだ。
 要因と改善を見て、私は今重要視されている地球問題には、海洋問題も大きく関わっていることが分かった。今すぐにこの地球問題を改善することは不可能だろう。だが、少しずつでも、多勢の人々が地球問題が深刻な状況であることに気づき、それが改善するようなことをすれば、いつかはこの地球問題を解決することができるかもしれない。プラスチック製のストローの使用を減少させたり、海にごみを捨てないなど、ちょっとした行動でも行うことが大切なのではないか。明るい未来にするため、少しでも「環境」について考えることが必要だ。

2021年12月19日