佳作 ウミガメ

近畿大学附属中学校 2年 浜野 向日葵

 現在、日本各地のウミガメの産卵地で子ガメの放流会が行われるようになってきている。しかし、子ガメの放流会はメリットばかりではない。たしかに孵化できないまま死んだり、浜から海までの間で死んだりすることはなくなるかもしれないが、それ以上のデメリットが放流会にはあるのだ。子ガメは生まれた直後、一種の興奮状態にある。興奮状態のまま沖に向かってひたすら進むのだ。大人のウミガメは地磁気を感じるコンパス能力を持っていると言われている。しかし、産まれた直後の子ガメにはその能力はまだないと考えられている。子ガメは沖に出るまでのわずかな時間にコンパス能力を身につけるのだ。ではどうやってコンパス能力がないまま海の沖の方向を見分けるのだろうか。それは地面の傾斜と明るさだ。しかし現在の日本では海岸に人間の手が入って不自然な傾き、不自然な光があふれている。そんな状況の場所で生まれた子ガメは簡単に海の方向を見誤ってしまう。道路に出てしまうと、車が走っていて、小さな子ガメなど簡単にひき殺されてしまう。しかもウミガメはどこにでも産卵をするというわけではない。限られた産卵場所にも関わらず人間によって環境が壊されているのだ。子ガメは興奮状態にあるとき、そして海の方向にちゃんと進んだとき、外敵の少ない沖までたどり着けるのである。しかし放流会はというと生まれた後ある程度育ててから放流する。するとコンパス能力を持たないウミガメになってしまう。人間的に言えば方向オンチのウミガメだ。ウミガメは一生のほとんどを海ですごす。そのウミガメにとって方向オンチとは生きる能力がかけているということであり、大きな問題だ。
 無事に海に出て、大人になったウミガメでも人間のせいで危険な目にあうことがある。浮遊ゴミの誤飲だ。現在、海などの汚染が問題になっているが、海の生き物たちもそれに巻き込まれているのだ。例えばビニール袋。透明でぷかぷか浮いていると、クラゲと見間違えやすい。誤飲を繰り返すと胃の中にゴミがたまって、食事をできなくなることがある。そうなると死んでしまう。
 このように、人間によってウミガメの数は減少している。しかし実際どのくらい減っていて、あとどれくらいで絶滅してしまうのかまでは把握されていない。その理由はウミガメは一生のほとんどを広い海ですごし、陸に近づくのはメスの産卵時だけだからだ。つまりオスは一度海に出てしまうと一生陸には戻ってこないのだ。だから生息数の増減を知るためには、産卵のために戻ってくるメスの数の増減で考えるしかない。しかしウミガメのオスとメスの割合は一定ではない。ウミガメの性別は産卵から孵化までのその場所の温度によって変わるからだ。二十八度以下だとオス、二十八度から二十九度だとオス、メスの両方、三十度以上だとメスの割合が高くなるといわれている。だから地球温暖化の影響でメスが増えてしまい、交尾できる数が減り、産卵しにやってくるウミガメの数が減っただけというのも考えられないこともない。メスが増えすぎてもウミガメは減り、オスが増えすぎてもウミガメは減る。人間による環境破壊はこんなところにも影響を及ぼしているのだ。
 私は、環境を壊したり、汚したりすることを減らさなければならないと思う。環境汚染によって被害を受けているのはウミガメだけではない。海の動物たちのため、陸の動物たちのため、そして私たち人類の未来のためにも努力しなければならないと思う。ウミガメ保護のための放流会、そんなキラキラと輝いた活動をすれば、自己満足にはなるかもしれない。しかしそれは本当にウミガメのためになっているのだろうか。まずすべきはそんなキラキラした活動だけでなく、普段ゴミをポイ捨てしない、電気を節約するなど環境汚染を少しでも食い止めることではないのか。直接ウミガメに関わるのも大切かもしれないが、ゴミ拾いのボランティアをすることの方がウミガメたちのためになるのではないか、と私は思う。

 

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2018年12月01日